なくなりつつある故郷の風景を語り継ぎたい

 

「筵打ち」
トントンと/一度に六つ 音がする/母が今夜も/むしろ打つ/布団の中でその音を/添い寝代わりに/聞いて寝る/母はいつ寝る/夜なべする/寝ている母を/見たのは何時ぞ 

 吉賀町出身神奈川県在住のともさん(斉藤ともきさん)が描いた絵に、津和野町生まれのとよさん(田中とよしさん)が“ことば”をつけた絵本「いなかのくらし」がこのたび、発刊されました。
 
 ともに1939(昭14)年に生まれのお二人が過ごした少年時代は、いわゆる“戦中戦後”です。現在のように物があふれておらず、必ず家のお手伝いをしなければならない、「物もなく、エラカッた子供のころのことは、鮮明に憶えている」(とよさん)というように、鉛筆画の濃淡と、こちらのご当地言葉で現された二人の少年時代は、写真や動画、彩色されたイラストよりも鮮明に伝わってきます。
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 70年ほどさかのぼった記憶が描きこまれたこの本ですが、筆者と同年輩だけではなく若い方の中にも「懐かしい」という声がもれてきます。特に川や山の幸に関する記述には、共感されたようです。しかし、とも&とよさんの川漁は、家族全員の食料を調達するためで、楽しそうな少年の姿が描かれてますが、彼らの真鍮はとても必死です。昔は当たり前に食べていたものが、食べられなくなったり、または高級食材に変わっていたり。
さまざまな角度から、時の移り変わりを実感できます。

 今年はちょうど戦後70年の節目で、「記憶」や「語り継ぐ」ということが重要なキーワードになりそうです。
 そんな年に実感の伴った「思い出」が本となって発刊されたのは、単なる偶然だとは思えません。
 二人の記憶だけにとどまらず、鹿足郡、高津川流域に住む人の共通イメージともいえます。
 幸いにもこの地域には、この絵本に描かれた風景が多く残っています。世代を超えて共有できる記憶もたくさんあります。
 ある地域の戦中戦後の民族誌としても、読み応えがあります。

 ぜひこの機会にご一読いただければ幸いです。
 

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□書 名 「いなかのくらし」
□著 者 とも&とよ(画:斉藤ともき 文:田中とよし)
□頁 数 96ページ(表紙カラー・中面モノクロ)
□部 数 1000部
□発行元 津和野町観光協会・吉賀町観光協会
□価 格 1,000円(消費税込)

□販 売
津和野町観光協会、道の駅シルクウェイにちはら、道の駅津和野温泉なごみの里、鯉の米屋、三松堂本店、金山文具店(津和野町)
カスヤ書店、道の駅むいかいち温泉、道の駅「かきのきむら」 など。

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